所蔵作品

部門
絵画
作家名
岸田劉生KISHIDA, Ryusei
生没年
1891-1929年
作品名
自画像
制作年
1913年
大きさ
40.3×29.9cm
技法・素材
油彩・板

1913年10月5日に描かれた自画像である。この時、劉生は22歳。1913年、14年にかけての自画像の制作は30点にのぼり、友人の伝えるところによると、筆は早く、1、2時間で一気に仕上げたというが、いずれも茶褐色を主調とし、意志力に満ちた厳しい表情を、強い筆触で写実的にとらえており、ある種の鬱屈を帯びながらもそこに緊張した生命感をみなぎらせている。

この時期は、彼の芸術における重大な転換点にあたっている。彼自身の語った言葉で言えば、「いわゆる近代というものの誘惑を卒業してしまったのに気付いている」そして、「(根本の要求から自然を見るという)自分一人きりで切り開いて行かなければならぬ孤独の道をだんだんはっきり感じて居る。自分はここに初めていい落着きを味わい得て居る」ようになった。

それは、後期印象派の画家、とくにゴッホやセザンヌに触発されての、“理論(セオリー)への心眼”から離脱して、“写実的要求”という非近代的態度を貫通することであった。

ここに上げた自画像の制作において、色を捨てた描写を彼はくわだてている。そして、彼独自の、そしてわが国近代美術史上においても特筆すべき細密描写の芸術への入り口に立ったのである。

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