ミュージアム・ツアー

令和元年度ミュージアム・ツアー実施結果

1. 実施日程

令和元年5月23日~令和元年12月19日(86日間)
平日火曜日~金曜日(夏季休業期間を除く)

2. 実施校等
  1. 実施校数
    130校(学校行事のため中止1校)
  2. 児童数
    7,537名(引率者含8,005名)
3. 実施概要

前年度に引き続き、北九州市立小学校の3年生が当該期間中、美術館を訪れた。児童は8人程度のグループで美術館の所蔵作品、建築、美術館から見える市内の眺望を鑑賞する。各グループには美術館で研修を受けたガイドスタッフが1人付き添い、子ども達自身の気付きを深める対話を軸にツアーを誘導する。時間は全体で1時間20分、グループでの鑑賞は50分程度となる。コレクション展Ⅰまたはコレクション展Ⅱの開催期間に来館し、主に北九州市立美術館の所蔵作品を鑑賞する。
学校から美術館までの送迎バスとガイドスタッフ(外部委託)の手配は美術館負担。

4. 今年度実施方法変更点
  1. 東田ミュージアムパーク連携
    北九州市立いのちのたび博物館における博物館体験プログラムと連携する。29校の利用があった。
  2. 実施時間
    前年度の実施時間では給食時間の調整が難しいとのアンケート回答が多かったため、今年度は実施時間を30分順延させた。
    〔午前開始時間〕 前年度9:50 → 今年度10:20
    〔午後開始時間〕 前年度13:20 → 今年度13:50
  3. 実施時間
    実施日時の選択肢を広げるため、今年度は5月下旬の2週間、8月最終週、合わせて3週間分の期間を拡張した。
  4. 事前打ち合わせ
    前年度は教員来館の上で事前打ち合わせを行っていたが、電話での打ち合わせを選択肢に加えた。
  5. 特別支援学校来館
    前年度、市内7校の特別支援学校はツアーを辞退していたが、今年度は小倉総合特別支援学校・八幡特別支援学校・八幡西特別支援学校の来館があった。
  6. ガイド研修追加
    前年度の課題としてガイドスタッフのフォローアップが挙がったことから、5月の事前研修に加え6月と8月にも研修を行った。また、10・11月には自由参加型のフロアレクチャーを実施した。
5. 実施結果
  1. 変更点について
    1. 東田ミュージアムパーク事業と連携することによって、幅広い体験を児童に提供することができた。美術館と博物館では楽しみ方の違いがあることに気付く児童も見られた。ただ、配布した資料に明記していたが、学校から両館へバスの手配や昼食に関する問い合わせが多く、連絡が煩雑となった。
    2. 前年度のアンケート結果では13.2%が不満・やや不満と回答した実施時間だったたが、本年度アンケートでは不満・やや不満の回答が3.7%と大きく減少した。ツアー開始時間を30分遅らせたことが学校の負担を軽減した結果となった。当館からバスで30分以上かかる学校からは、引き続き給食時間との調整が問題として挙がっている。
    3. 5月下旬の拡張期間に関しては希望する学校がほとんどなく、実施は3校のみであった。8月に関しては、希望学校はあったが大雨の影響で実施は2校にとどまった。
    4. ツアーを実施した130校のうち、電話での事前打ち合わせは112校、美術館へ来館は18校であった。電話打ち合わせのみでも、十分事前準備ができたとの声が多かった。前年度に比べ、教員の撮影マナー・作品接触違反の増加が美術館監視スタッフから報告されている。
    5. 特別支援学校は1学年あたりの児童数が少ないことから複数学年合同活動であることや、児童2~3人ごとに美術館スタッフやガイドが付き添うなど、規定のミュージアム・ツアーとは異なる動きが必要となった。来館した児童が美術館を大変楽しんでいる姿を見られたが、支援内容が児童1人ひとり異なるため誘導方法や時間配分において美術館スタッフの経験不足が課題となった。
    6. 8月の研修では、展示替えをした作品の確認や5~7月までの事例紹介、ガイドスタッフ同士の情報交換が行われた。5月研修よりも具体的な問題解決へのアプローチがあり、不安解消につながったようだ。10・11月のフロアレクチャーではガイドスタッフ自身が鑑賞を楽しむことを重視した。作品への理解や親しみが増すことで、児童への声かけに変化が見られた。
  2. ミュージアム・ツアー後のリピート数(個人来館)添付資料1PDF
    ミュージアム・ツアーで来館した子どもたちが、休日を利用して保護者等と再来館する姿が今年度も多くみられた。土日祝日・夏休み期間に限るとコレクション展入場者の約1割はミュージアム・ツアーの参加者とその保護者が占めており、昨年度の8.7%に対し今年度は11.1%と微増している。平日を含むコレクション展の全体入場者数に対するツアー参加児童と保護者の割合は3.1%であるが、これも昨年の2.0%から微増している。
6. アンケート結果
  1. 総評
    学校アンケート問1では、130校中129校から満足またはやや満足との回答が得られた。問2では130校すべてから満足・やや満足の回答を得た。問1でやや不満と回答した学校は、実施時間が短すぎるとの指摘だった。
  2. 美術館・ガイドスタッフの対応
    問3では130校中129校、問4では130校中128校が満足・やや満足と回答した。やや不満と回答した学校が6月のみであることから、ガイドスタッフの研修不足の可能性も含めて改善を検討する。
  3. 事前準備
    事前打ち合わせに関しては2校、バスの手配では3校から不満・やや不満の回答があった。電話打ち合わせ可能となったことに加え、東田ミュージアムパーク事業と連携したことで学校側にとって分かりづらい点があったことが理由と見られる。
  4. 実施日時
    実施日に関する問10では7校が不満・やや不満と回答した。特に7月と12月実施校から低評価の回答が多く、学期末に実施する難しさを示した形となった。該当の時期に来館する学校へ、丁寧な説明や配慮が必要である。
    実施時間に関して、上記変更点において給食時間の調整に関する問題は大きく改善された。今年度の不満・やや不満の回答からは、ゆっくり鑑賞するために実施時間を延長したいという意見や、児童の集中力が続かないため実施時間を短くしたいなど、児童の反応を示す意見が見られた。
7. 成果
  • 少人数の対話を軸とした鑑賞を行うことで、他者と自己の見え方や感じ方の違いを発見し、違いを楽しむ発言が多く聞かれた。
  • コレクション展で特集された郷土の作家を知ることで、作品に愛着を持ち、自分たちの暮らす地域に誇りを感じる児童が多く見られた。
  • 北九州市立美術館をはじめて訪れる教員も多く、児童だけでなく教員にも美術館に興味を持ってもらう機会となった。また鑑賞方法に関しても授業の参考にしたいという意見が聞かれた。
  • 特別支援学校の来館が3校あり、昨年度よりも幅広い児童に美術館の存在を知ってもらった。
  • 前年度の写真を活用した事前学習や教員同士の申し送りで、ツアーへの理解が深まっている学校が数校見られた。児童の鑑賞意欲が高まるだけでなく、教員の協力体制も強まっており、今後のツアー継続に向けて大きな布石だと感じる。
8. 課題
  • 東田ミュージアムパークツアーと連携したことによる学校・博物館・美術館の連絡齟齬は、注意事項の明記や該当校への丁寧な説明が必要。
  • ツアー実施日に関して、学校行事や気象を考慮しながら期間を見直したい。コレクション展の開催期間との調整もあるため、学期末の実施となる学校へは丁寧な説明を行う。
  • 事前打ち合わせを電話で行ったことで、教員に対する美術館マナーの周知徹底が不足した。打ち合わせ時の口頭説明ももちろんだが、送付資料にも分かりやすい注意事項の記載が必要。またツアー当日に直接伝達する時間を設けることも検討したい。
  • 美術館やガイドスタッフへの不満が6月のみに見られた。不満内容の記述は特にみられなかったが、ツアー前のガイド研修の内容を見直す必要がある。時間配分を考慮し、限られた時間の中で児童との対話型鑑賞を深めていかなければならないため、臨機応変に行動する力や対人スキルを高めていく必要がある。児童との対話に関して過去の事例を挙げるなど、より実践的な研修構成を考えたい。
  • 特別支援学校の受入から、従来のグループ鑑賞では児童への声かけや作品の安全確保が不十分であることが分かった。児童の実態に則した鑑賞方法をさらに探っていかなければならない。
  • 市内小学3年生を招待する企画であるが、市内の県立・私立学校は来館が実現していない。市立以外の小学3年生にも来館を促す仕組みを検討していきたい。