美術館協議会

平成30年度第1回北九州市立美術館協議会議事録

名称

平成30年度 第1回北九州市立美術館協議会

議事

報告1 平成29年度 事業実施結果について
報告2 美術館友の会の活動状況について
議題 北九州市立美術館運営評価について

開催日時

平成30年6月28日(木)14時〜16時

開催場所

北九州市立美術館 エデュケーションルームB

出席者
委員
吉武 弘喜(会長)
九州造形短期大学名誉教授
山梨 俊夫(副会長)
国立国際美術館館長
中村 渉
北九州商工会議所参事
川浪 千鶴
元高知県立美術館企画監兼学芸課長
永津 美裕
北九州市立大学大学院名誉教授
大庭 明美
北九州美術家連盟
原田 美紀
原田・川原法律事務所弁護士
新谷 幸子
福岡県立八幡中央高等学校教諭
事務局
西村 勇晴
北九州市立美術館館長
後藤 基明
北九州市立美術館副館長
鐘ケ江 祐二
普及課長
日髙 満博
普及課普及係長
那須 孝幸
学芸課学芸係長
永友 義夫
普及課分館長
仲山 恵美
普及課普及係
奥田 亜希子
学芸課学芸係
議事の概要

平成29年度の事業実施結果及び運営評価について、意見をいただいた。

議事録
事務局
人事紹介、本日の配布資料・議事日程の説明
事務局
平成30年度第1回北九州市立美術館協議会を開催します。
会長
それでは早速、事務局から、報告1「平成29年度事業実施結果」及び報告2「美術館友の会の活動状況」について、説明をお願いする。
事務局
(報告1「平成29年度の事業実施結果について」説明)
(報告2「美術館友の会の活動状況について」説明)
会長
ただいまの説明についてのご意見・ご質問等ありましたらお願いします。
《入館料について》
委員
展覧会の入館料の決定方法は何を基準にどのように決定するのか。
共催の場合、収入は市の収入になるのか。どのような分配の仕方になるのか。そもそもの仕組みを教えてほしい。
事務局
条例で展覧会の入館料は2,000円以内、コレクション展は150円と決まっている。各企画展については、実行委員会で収入と支出を見ながら入館料を決定し、収入については出資割合で分配している。
委員
入館料については、上限があって、今までの実績からどのくらいの入場者がくるかを踏まえ、実行委員会で決めるということか。
委員
実行委員会で決めるのではなく、館長定めではないか。
事務局
実行委員会の委員長は館長が務めていますので、そういう意味では館長です。
委員
公立の美術館としては館長定めではないとおかしい。
事務局
企画展を実行委員会形式で行う場合は、館から離れた組織となる。
委員
ここの美術館の入館料は、ここの美術館が決めないとおかしいのでは。
事務局
実行委員会の中で内々で決めて、それについてこの金額で良いかどうかを館長として決定しているということ。
委員
公金だから、市の権限がある人が決定しないと。実際の収入行為は副館長が行っているのか。
事務局
そうです。
委員
その辺を整理して透明化しておかないと。市の見えないところで決定されているわけではないですね。
委員
ただいま説明がありましたとおり、実行委員会の場合にはかなり事業費が大きく、それに見合わないような入場料と目標値で本当にやるのかというのは、財団運営なので説得力を持たせる努力をしている。かといって、入場料収入を上げても、逆に入館者が減る。昨年チームラボを引っ張ってくる時には、県内からどれだけの来館者が来るかとか、広報戦略から金額を決めて行くということで、財団や県、実行委員会に対してかなり説得力のある資料を作って議論を行った。
会長
私の記憶では、国は平常展の入場料に見合う収支しかしない。特別展に関しては、新聞社なり、報道機関が出資してくれて、それを上乗せする。収入は平常展見合いの収入しかいただかなかった。
《ミュージアム・ツアーについて》
会長
ミュージアム・ツアーは、小学3年生に対し実施されているが、小中学校の間に1回でも美術館に来るような計画はあるか。
事務局
今年度から全小学校3年生を対象にしたミュージアム・ツアーを始めた。今後どうするか、4年生以上、中学生をどうするかは、今年度の状況を見ての判断になる。小学3年生だけでは不十分との意見もある。
会長
ミュージアム・ツアーの対象校は、校区ごとに選んでいるのか。
事務局
全市139校を対象にしている。
会長
昨年度実績18校とは?
事務局
昨年度は八幡東区、戸畑区で19校計画したが、1校はインフルエンザによる学級閉鎖で実施できなかったもの。
会長
139校と18校の関係は?
事務局
平成30年度は昨年実施した18校を含めた、市内の全小学3年生を対象にしている。
《たんけんパスポートについて》
会長
たんけんパスポートの発行枚数を89,000枚から10,000枚に減らした理由は?
事務局
89,000枚は全小中学校に配布した枚数。今回はミュージアム・ツアーによる来館者及び窓口来館者に配布した。
会長
何らかの形で美術館に接触があった子供たちに配ったということか。
事務局
そうです。今年はミュージアム・ツアーで来る3年生全員に配布する。
会長
効率は良くなった。
会長
「北九州市立美術館運営評価」について、事務局からお願いする。
事務局
(議題「北九州市立美術館運営評価について」説明)
会長
事務局の説明について、質問意見があればお願いする。
《運営評価の記載について》
会長
委員から毎年意見があるように、運営評価については何が課題かではなく、課題を踏まえて今後どうしていくかというものを考えていくもので、それができていないのではないか。せめてB評価をつけたものについては、あきらかに課題があるとの認識だろうから書くべき。A評価であっても、物事の視点によってはいくらでも課題はある。そこを書かないのは、せっかく欄を作っている意味がない。
事務局
以前よりそのような意見があったことは聞いている。これはまた課題になるが、30年度以降、課題原因につきましても、書くべきところは書くというような方向でいきたい。
会長
例えば、「他館との連携した調査研究や共同企画展の推進」項目については、たくさんあちこちと連携して6館。リニューアル関係で当館はやっていないが、他館と連携して作品の貸出を行ったと。良いことをやっているが、それをどう成果として評価するかというところが全くない。例えば、熊本や島根の美術館でどの程度人が見に来たのか。そういう情報も入ってないし、見た人たちの感想がどうだったのか、調べたのか調べてないのか、そのあたりを反映させていかないと。これから北九州市だけでまわっていたら、そんなに人口も増えないし、入館者数をどうやってとらえていくか。うちの作品を貸し出して、そこで見ていただいた数を、せめて情報として表す等の工夫をしないと。ただ「人数が減った」「休館のため」。休館は課題でもなんでもない。それはむしろ良いことであって、じゃあ休館が終わった後、この経験をどう活かすか、やっぱり休館中にやってよかったこと等をもうちょっと前向きにとらえて。休館中にやったことは、その場しのぎで終わったということでは、ちょっと残念ではないか。次の5か年計画で、他館との連携は拡大していく方向と、前回見た資料にも書かれていたが、自分たちがせっかく努力してやっているのだから、それをどう正しい評価していくかという評価の観点がなかったら長続きしない。
最後に、30年~34年にかけての取り組みというところで、「他館との連携」にアンダーラインがしてあるが、一つの重点としてやっていこうという方向性は非常に良いが、その結果をいかにこの美術館のパフォーマンスとして表していくか工夫していかないとダメではないか。
事務局
しっかり受け止めさせていただく。
《広報宣伝について》
委員
広報宣伝について「美術館本館では何をやっています、ワークショップをやっています」という来館者のための情報提供が一番大事だが、それ以外に「この美術館はこれだけ北九州市にとって意味のあることをやっている。」という自己宣伝の部分がない。それを打ち出すことによって、この美術館の対外的なイメージをはっきりさせる事も積極的にした方が良いのではないか。そういう意味で、今やっている森山展や次に計画している青柳展は、市民は恐らく知らない作家だと思うが、北九州の地域的な美術がどうだったのか、北九州にこんなに面白い作家がいたという事を、自慢というか、自画自賛というか、自分たちのところのものをもう少し積極的に共有していく方向で、戦略的に広報した方が良い。
委員
私も今の意見に賛成。これだけ長く、しかもこの項目だけで評価をやっているから、評価のためのポイントはわかりやすい指標になっていて、いったんここで共有して。何のためかというと、多くの市民、それと新しい利用者だとかいろんなことが出てくる。今後にどう資するかという、目的はそこだとすれば、この一部のためだけのパブコメのような、なかなか皆さんがサイトの奥まで見ないと見えないものではなく、普通に伝わる言葉で。例えばコレクションも、コレクションを資産化していくという意味ではないか。修復と言ってそれだけでピンとくる人は少ない。長く伝えていく役割ということをちゃんとひも解いて伝えて、これだけ資産化に貢献しているということを。例えば、作品の収集と研究、公開、ここらへんにまたがるようなことになるが、美術館のメッセージということは文章化して、それはこの会議のためとか、マスコミから求められたら出すということではなく、積極的にHPで出した方が良い。コレクションの修復をこれだけ謳っているというのも、多くの美術館に学んでもらいたいが、一方でさっき言ったような危惧も消えない。研究も、展覧会がきまっていたらわかりやすいが、将来形になるかもしれない、ならないかもしれない、ただコレクションを資産化するために重要な研究で、将来展覧会も視野にいれているというような、調査研究体制もあり得る。
教育普及ボランティアに関してのことも、これだけの積み重ねがあって成果がある館だからあえて言えば、やっているという事で終わっている事も、どう進めるかという時に、コレクションや展覧会も「これがどういう役割を果たしている」「皆さんにとって、どういう潤いにつながる」ということが伝わっていかないと。教育普及、学校と言えば概ね悪くは言わないが、それはそれで囲い込まれると、美術館が今後厳しい時に簡単に切られてしまうのではないかという危惧もある。だから、当事者じゃない、子供じゃない、子供を持った親とか学校関係者以外も応援したくなるようなことがもっと欲しい。それは結論から言って、この指標にも影響すると思う。HPを見ると、教育普及のページに「工事中」が多かったが、学校現場の先生も、今は利用できなくてもこんな活かし方をしている学校があるとわかれば、いつかはやってみたいと思うこともあるだろうし、そういう美術館だったら応援しようという人も出てくる。それから広報と言ってもいいだろうが、そもそも美術館とは何ぞやという、大きな可能性につながるのではなかろうかと。
ここまでやってきた館だからこそ、項目と項目が有機的につながるような言葉を出してそれが伝わるように。展覧会の広報だけに力を入れるのではなく、メッセージの浸透に少し力を入れたら、活かされていくのではなかろうか。
事務局
答えになるかどうかわかりませんが、美術館の大きな仕事として、収集・保存・修復がある。もう一つは次世代に繋いでいくというのが大きな課題であるが、当館としても、美術館の財産、資産を次世代につないでいくのが大きな課題である。そういった意味では、ワークショップなどを通じて「うちの美術館にはこういうものがある」「こういう特徴がある」「こういう方向で運営している」というところを、次世代に繋げていく必要がある。そのためには、今いる人にも伝えなければならないし、そして何より、これから次世代にたっていく子どもたちにも伝えていかなければいけない。そこは認識しながら取り組んでいきたい。
《課題原因の記入について》
委員
私も課題原因のところを書いてほしいとしたが、課題といってもマイナスだけではない。例えば人数が増加したら、何が原因で増加したのか、何が好評だったのか。検証と今後の対策、要するに自己評価があるから課題原因がわかって、課題原因がわかるから、今後の対策がわかるとリンクしていないといけないので、本当はこの評価シートのメインは、後半にあるのではないか。例えば教育のところだと、参加者増に結び付いた努力した部分があるから、それがこれだけのことをやったので結び付いたから今後も維持していくという形の部分も書いたら良いのではないか。マイナスの部分だけが課題ではなくて、原因、要するにプラスになった原因を分析したうえで、だからこそ維持していくのか、今回はできないので、次はやむを得ないのかとか、そういった部分を書くと、やってることをきちんと書くという事になる。
事務局
検証欄の課題原因のところだと思うが、これについては、先ほど会長等から意見をいただいたので、来年度以降きちんと対応できるようにしていきたい。
会長
目標に書かれた評価指標との関連だけで、狭くとらえていたのではないかと思うが、それだと逆に何の役にも立たない。それは、一目瞭然というか。さっき事務局で言ったような学校教育向けのサービスもまんべんなく全部やれば、それに越したことはないが、お金もいくらでもかかるし効率が悪い。効率化していく方向性を、今後の対策としてここに書くならば、課題の方でもそれを示唆するような、繋がるような課題の書き方、原因のとらえ方があるはず。効率化が1%から10何%になった事は、非常に効率化したわけですよね。確かにそうかもしれない。ただ、北九州市立美術館がどこにあるかも思い浮かばない子供たちが、持って帰っているかどうかわからない。行ってきたお土産にもらう物は、そう簡単に捨てないし、それは大事なこと。
委員
こういう評価作業を始めるにあたって、その時点、もう何年もまえになるが、いろんな議論があったが、一つには、評価のための評価になり、実際美術館の人たちの仕事量は大変だ。それを、評価のための評価になる事を避けるためにも、どういう風に簡略化、整理していくという議論も結構やった。その結果、今こういう風になって、今度検証の部分で自己評価、評定、目標どおり達成できた、他の欄は空欄という風に簡単すぎる形になってしまった事についても、「少し背景がわかるようにしてほしい。」という意見も数名あった。自己評価という場合、文章としてはこうなっているが、美術館が自分たちの仕事を振り返った時に確実に自己分析はしてるわけで、そういう部分をうまくまとめられたら良い。確かに空白が続いていると、ずいぶん簡単だな、これを評価するのは困ったなあという事にもなりかねない。
事務局
自己分析という話が出たので、背景とか経緯を含めて検証欄については少し充実させる方向で考えていきたい。
委員
余計なことですが、美術館の中で誰がそういうものを書くか。若い人にやらせた方が良い。そういうことによって、美術館の仕事の内実が、もちろん現場の人だから普段から自分たちの仕事と思っていても、それをすることによって、余計当事者意識が強まってくる。後で先輩たちがチェックすれば良いので、若い人が良い。
委員
私も課題や評価をしていて、大学も全部評価である。確かに評価のための評価疲れみたいな作業になっていて、これを毎回続けてくると、ただ「した」と到達しただけ、結果だけの話だが、この中に欠けているのは、マネージメントをする人も、これをすることで、初めてわかる部分がある。それをバラバラにしていると中々わからないので、共有化する手段として、委員に出すための資料ではなく、これに出ているのはアウター部分、外部評価。つまり「人」「物」「金」「情報」そういうものがある程度備わらないと、ないものねだりで、「人」「物」「金」の組織体制がこの中にない。大学でも、教員と事務職との壁がものすごく厚くて、きれいに分けているようで、その狭間に落ちていく仕事がいっぱいある。教員は自分の専門分野しかしないから、こういう作業をしたがらない。事務がそれを不満に思う。学芸員と事務員の関係が少し似ているところもある。事務員が3年ごとに異動することもあるが、事業評価をつなぎのような道具として使えば良い。つまり、インターナルマーケティングと言うが、内部の組織の人が一生懸命やろうとしたら、それが外部にもつながるという理屈があり、むしろ内部の経営を組織体制を含めて美術館の組織全体が勉強会を開くなりして、それに我々がコメントを出すという形でしていくのが、今サービス産業等でやっている。いかに職員をやる気にさせて外に伝えるかという話なので、これを道具に使えば良い。事項を目的化すると、誰かが1人で作業する形になってしまうので、むしろ平面的ではなく「今年はこの作業をみんなでやろう」みたいなメリハリを少しつけたらよいのではないか。全部やろうとすると、全部やらないといけないが、そこは全員参加というよりむしろ、マネージメント事業の多さ、生み出すマネージメントを、堅苦しい言葉だが、組織体制みたいな話でどうしても行きつくので、お金とか。今の限界の中で、これを皆さん方と我々とでうまく使えるようにしたほうが良いのではないか。これをしたからAとかBとか、自画自賛でいてもあまり意味がない。皆さん方と我々との共通の道具になれば良い。若い方がしたり、学芸員と事務職が境界なくして狭間を埋めるような作業をしていかないといけないのではないかと。むしろ、事務職員に対する研修制度とか、そういうことに力を入れたほうが良い。スタッフデベロップメントと言って、事務職員も学校の先生みたいにさせる。事務職員は積極的に学芸員の仕事をやるとか、学芸員も予算折衝についていくとか、そういうことをする道具にしてはどうかという感じがした。
事務局
いろいろとご指摘いただきましたが、できるだけさせていただく。
委員
これが始まったころからいる学芸員も6~7年経つ。学芸員として一人前でいろいろな事をわかってきているから、もはや若い人とは言えないが、積極的に一緒にやっていければ良い。
会長
国立美術館では、どのくらい自己点検評価を作っているか。
委員
毎年各美術館が評価・報告あわせて作っている。外部評価委員会の厚い資料もある。評価委員の方が大変。全部読まないといけないから。
会長
私も以前作っていた。結局年報が2冊できたようなもの。課題とか反省点とか今後の改善方法はあまりまとめる暇がない。とても事務的にまわらない。いろいろ言ったが、どこも大変な仕事を抱えている。
館長
毎年努力して、年報はこの協議会にあわせて出版している。皆さんに配る資料が基になって年報ができている。
会長
ここは直営の美術館だから、何年かに1回抜本的なレビューがあるという事はないだろうが、大学は設置審査がありますから、何年かに1回レビューを受けなければならない。そのために毎年の評価報告書が大事。それを大学の先生が集まって現地調査と報告書を見る。なかなか厳しい。
事務局
うちの場合は制度的にそういうものがないから、少し甘かった面があるかもしれない。
委員
でも、この評価システムは5か年計画を作ってから、それに当てはめているという事ですよね。
事務局
はい。これについての総括もしなければいけないし、また、次の協議会の時に必要になるから、そういう意味では、5年ごとの、というのはあるが、定期的なレビューはないということ。
委員
大学の場合は、認可システムなので、それがきちんと確保されているかをチェックする。美術館の場合も5か年計画作って、運営協議会を使わないといけなくなっているから、品質チェックというか、ちゃんと品質を保持しているというチェックの役割を果たしている。だから、今まで事前から事後までチェックして、あと事務を厳しくしますよという体制になっている。美術館はそういう事はないが、根本からすると、チェック項目はあまり分断しない方が良い面もある。連鎖しているからその辺の分析をすることが大事。「した」という事ではなく。それを今後検討してもらえるとありがたい。
委員
原因・課題の部分は、学校の方でも自己評価票を作っており、すべてHPですぐ見られるようにしている。課題、原因となるから、悪かった時の事だけではなく、例えば評価がAだが、来年以降Aをつなげていくためにこういうことが必要とか、こういうことが良かったというところを書いたほうが良い。また、目標があいまいな部分があり、例えば数値的な目標を入れられるものは入れた方が、外部の方が見た時に「こういうところまで」とわかりやすいのではないか。
委員
他館との連携、せっかく尽力されたので、それがどう活かせているかという事をわかりやすくしていただけると良い。
会長
評価作業がしやすいように、目標と評価指標の立て方を具体的にしてあるから、評価作業がしやすいという面はあるが、逆に、私は前から見ているからわかるが、おそらく今いる人でも、学校の先生方や他から来られた一般の方から見るとわかりにくい。この数字自体はわかるが、それがこの美術館にとって、北九州市にとってどういう意味があるのかというのは、なかなかわからない。さっきの学校の件の指標だって、市立の美術館として市全体の学校を受けるんだと、その中で今年とか5年間の位置付けはどうなっているかという、大きな巨視的なマクロの見方から始まらないと、本当は一般の人にはわからない。今年何人やりました、それがどうしたということ。職員が少ないわりに大変だということはわかっても、市全体にそれがどういう風に反映していくのか。10年経てば市民で20代の人は全部美術館に行った事がある事になるのかなと。小学校3年生の時に全員が美術館に行くという事になれば、その子たちが20歳になる頃には、20歳の人たちは一応みんな美術館に行った事があるということになる。そういうのがないと、意外とこういうのはわかりにくい。ピンとこない。
《アウトリーチについて》
委員
音楽では出前コンサートがあって、なかなか美術館の作品が、著作権の問題とかあるだろうが、画像とかフィルムとか非常に高密度なものが、ターナーとか見てもそうだが、簡単なマイクログラフィーみたいな、その人の「人となりと作品」ができるのがある。そういうのを学芸員が学校まで持参して見せて、専門的な見方の説明をするという事はできないか。本当は美術館に来てもらうのが一番いいのだろうが。
委員
出前授業というか、作品をもっていけるのであれば持って行って、それで「こういう見方もある。」というのもある。BSを見ていると、若沖とかある。補完してみたり、凝縮してみたりして、そこに専門家が説明したり。ここに書いてある「学校と連携した学習プログラムの実施」とありますよね。いわゆる小中学生は、美術、音楽、哲学、歴史に触れる機会を、いかに感受性がある時に、できるだけ触れたほうが良い。本物が一番良いが、受験勉強に入ってしまうと、そういう機会がなくなってしまう。これが社会に出て仕事をし、外国人と接触をする時に、基礎となる教養のもとになる。
音楽も美術も全部いけるわけではないが、小中学校に行って楽器に触らせたり、演奏をしてみせたり、こう言う形でやっている。美術館も外に出ていく。持ち出せないなら美術館側から。本当は学校の美術教育の中でやる事なのかもしれませんが、そういう機会があれば、展覧会があった時に行く誘因になるのではないか。
事務局
ご指摘された事は、当館も以前から考えていることで、美術に限らず、文化施設が実際に学校に出向いて、ふれあいや解説をするという事だが、美術の場合は、実物を持ち出しにくく、自然史系の博物館は化石を持って行って触ってみせたり、実物を使ったりということができるが、美術はなかなか難しい。出前式の教材も開発されており、各美術館ごとに開発しているところもある。当館としても何かできないかという事は議論しているが、なかなか実現できてない。学芸員が出向いて何かをするという事以外にも、ボランティアでできないかとか、アーティストを派遣して何かできないかとか、教養的なものではなく、体験的なものを学校で実践できないかという事は模索しているので、今後も課題としていきたい。
会長
アウトリーチ事業と言う。リソースが博物館に限られているので、サンプル的になる。科学系はテレビ会議システムを使ったりして、かなり積極的にやっているようだ。宣伝は上手だが、日常的にはできない。非常に大変で、準備もいるし難しい。特に美術館の場合はやたら持ち出せないものが多いので、鑑賞に堪えられるレプリカを作ればレプリカ代がかかるし、いろいろと問題も起こる。著作権の問題とか。なかなか難しい。
評価項目Cのアウトリーチ参加者453人と書いてあるが、アウトリーチの中身は?
事務局
今回のアウトリーチは美術館外で活動するという事で、それが学校かと言うと、ここ数年は学校には出向いていない。街中に出て行って、具体的にはリバーウォークの1階の広いスペースで行ったり、児童施設の一角を借りて行ったりという形で行っている。当館で話題になっているのは、特定の学校に行くことは可能だが、市立の小中学校だけでもそれなりの数があるので、そこを幅広くというよりも、興味のある人が不特定多数いるところを選んでいった方が、理に適っているということで、現在はそちらを優先している。
会長
科学博物館だと標本の貸し出しもやっていた。アウトリーチと一緒。学校の必要に応じて、壊れにくい化石類等。たくさんあるアンモナイトは少々壊れてもどうってことない。
ただ、学校にもある程度のものを持っているので、学校に無い物を借りたいだろうがなかなか難しい。
委員
アウトリーチという事でいうと、自然科学系とか歴史系でいうと、例えば九州国立博物館なら、教育目的としたコレクションがある。おそらく、管理の方法が違うと思う。県立美術館のように県有財産化すると、どうしても物の移動や保険の対象になったり。そうなると、とても学校に持っていけない。もしものことがあったら美術館も学校も困る。
特異な例だが、熊本県美は浜田知明さんの版画を確か3セット持っていて、1セットは完全保存用、もう一つはコレクション展示に、もう一つは教育のために使う。おそらくそれは県有財産化してないはず。教育コレクション的な位置づけで、ケースを作って数点持って行って、学校で戦争について作品を通じて話をするなど、いろいろな使い方で。先生に渡すのではなく、美術館から一人いってくるという形だが、気軽に、美術専用車を仕立てて保険を付けたりせずに、公用車に乗せて、担当者でできるような。それは篤志家がいたという事と、浜田先生の好意もあったという特例だが。
高知県美だと、レプリカも程度によるが、それでもレプリカ作成は美術館の予算では計上しにくい。観光セクションも明治維新とか大政奉還150年等があるので、観光の方から言われたので、逆に費用負担してもらい金の屏風のレプリカ等を作った。デジタルスクロールで絵巻物が見られる物は、必ず学校やアウトリーチ用に使えるようにと言うことで、美術館からお金をもらって作った。
山口県美が15年くらい前、学芸員が行ってデジタル画像で授業をする。外から先生が来るというのも、ダブルティーチングで良い授業になる事も多いが、逆に高精細のCD付きの先生用の非常に良い本を作って全校に配った。先生が授業を組み立てるのが一番いいということで、先生のための講座も開いたうえでそれを配って、自由に拡大してもプリントアウトしても耐えられるようにと言う資料。それがあまりに出来が良かったので、のちには出版もされた。そういうもので、授業に使いやすくなるような提案を、素材を作って学校に提供する。学校でそれを活用する。これがあればこんな授業もできる。こんなサポートがあるなら、これができるかもしれない。そのようなやり方も試みた。
会長
最近福岡県美も積極的にやっているのは、県立の歴史資料館や美術館職員に、学校や公民館で講義しないさいと。公民館や学校は講師の謝金を払わなくて良い。要するに公務として、県の仕事としてやりなさいと。それが県の文化施策のPRにもなる。歴史資料館の職員が無料で講義してくれるので助かっている。一種のミュージアムサービス。
委員
やるほうの学芸員は仕事が増えるだけですけど。
会長
学芸員の点数にはなる。私はちゃんとやりましたと。自分で出かけると思えば、休みを取って、謝金をもらえるにしても、いろいろ制約があって、報告もしなければならないが、県の仕事としてやるのであれば、仕事が増えて大変というのはあるが、やらなければいけない。仕事が増えて大変だけど。先日送付された資料集には記録してあるのでよく頑張っている。
資料集でわかりにくいのは、同じテーマで何回も、それも行った先も同じだというと「あれ?」と思う。ダブル掲載かなと。多分違うでしょうけど、シリーズでやったとか何かあるのだろうが、資料の作り方としてはわかりにくい。テーマも同じ、同じ講師で行く先も同じ。何回も行ったのであれば、せめて何をやったのかがわからないから、ダブルカウントしているのではないかと思う。記載してほしい。
会長
皆さん方からの意見を踏まえて、29年度の美術館の評価指標として確定をするという事で、ご承認いただけますでしょうか。
≪委員≫
異議なし。
《外部資金の投入について》
委員
今年度から将来に向けての5ヶ年の取り組み内容及び評価資料だが、これまでに自己評価委員会で評価するのが決まりで、あまり出てこなかった項目で、最近美術館を取り巻く世界でいろいろ出てきている事がふたつある。一つは外部資金を持ってこいという事。どこの自治体でも言われていることだろうが、ここの美術館は市の方から外部資金を投入しろという事は言われてないか。
事務局
それはない。
委員
どこの美術館でも、こういう会議に行くと、外部資金を美術館の運営評価の中に加えることが話題になる。
事務局
国の補助金か?
委員
国の補助金も含めるし、民間の助成金もそう。
事務局
国の補助金はなるべく取ってくるというのはある。
委員
恐らくここの学芸員も実際にはお金を利用しながら展覧会の実施に役立てていると思うが、今、民間の諸団体が展覧会や学芸員の研究に対して助成金を出している。そういうものを利用しながら充実させていくという意味で、外部資金の獲得が美術館運営を肉付けするという事を評価項目にしていくという手がある。今助成するところが増えており、お金をもらう事については積極的に考えたほうが良いと思う。
《インバウンドについて》
委員
もう一つ、外国からの来館者の増加。これに対する対応が「外国人向けの広報を充実させる」、これに伴う平成30年度の取り組みとしては、「英語版HPを作成する。」と書かれているが、HPを英語にするだけで大丈夫か?東京でも大阪でも内閣府が言っているように、全て4か国語対応にするみたいな事をして、それについて遅ればせだけども、それなりの国立美術館全体で3億円くらいの予算がついている。北九州は緊急にしなくても良いのか。やがて来るので、その辺は考えておいた方が良い。
事務局
今、当館のコレクションを30点選んで英語版の冊子のみを作っている。今後、韓国語と中国語版を作ろうということで考えている。それについては、今年度末か新年度予算かということで考えている。HPについては、現在はちょっと。
委員
2020年のオリンピックに向けて、だんだん全国的に動きが広がっていく。
会長
江戸東京博物館は5か国語対応ボランティアがいる。いずれそういう手を打たなければいけなくなるかもしれない。
外部資金について、国立大学は法人化したら、1パーセントずつ国からの交付金が減るので、研究費も公募してとらなければいけなくなる。文化庁は結構補助金を用意している。前みたいに県市町村に対する一律的な補助金はなくなってきているが、逆に応募制で少数のところにポンとやるというのが、主体になってきている。
委員
大阪市立の新しい美術館の方が来た時に、そこは、地元からお金をどうやって集めるか、それで運営の基盤とまではいかないけれど、そういうものをやろうという事。
館長
今日は長時間にわたって活発な議論ありがとうございました。副館長が話したように、いただいた課題は館内で消化して次回に活かしていければと思う。また、運営の面でも活かしていきたい。
今日はありがとうございました。
事務局
これを持って平成30年度第1回北九州市立美術館協議会を終了する。
会議資料